最近はカメラの高感度化や画像処理用ソフトウェアの使い勝手の向上等により、誰でも気軽に天体写真が撮れるようになって来ました。
また、PCやスマホのバッテリーも強化され、星を観るエリアでは望遠鏡を覗く人よりカメラやPCのモニターを見る人の方が多くなっていることもあります。
モニターの方が見やすいし、 (私もブログをやっているので)インスタ映え等による自己満足や自己承認欲求を否定するつもりはありませんが、もう少し自分の眼で天体を観察してみませんか?という思いを込めて、天体観察に影響する知覚機能についてここで纏めてみたいと思います。
本稿はこれまでに私が国内外で学んだ知識をベースにしますが、英語の論文等の間違った解釈等があるかも知れませんので、お気づきの点がございましたらご指摘頂けると幸いです。
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1回目はヒトの眼の構造の理解とそらし眼、暗順応についてです。
目新しい点はありませんが、、。
 
①眼の構造
・ヒトの眼には明るい光の下で色を認識する錐体細胞と暗い光(動き)に敏感な桿体細胞がある
・錐体細胞は目の中心部にあるFovea(中心窩)という小さなエリアにあり、桿体細胞はその他の部位(周辺)にある
・眼の中心(中心窩)ではひとつの網膜神経節細胞が510くらいの錐体細胞と結合している。
・中心から眼の周辺に向かってひとつの網膜神経節細胞が結合する桿体細胞は増加し、眼の周辺で1000以上もの桿体細胞と結合する
・これらのことから解像度は中心窩に分布する錐体細胞の方が高い
・逆に眼の中心部以外はひとつの網膜節細胞あたりの光子が多くなり、暗いものを認知しやすい
・解像度は視軸から0.6度外れたところから急激に落ち始め、10度ずれると解像度は1/4になる。
 
②そらし眼
・そらし眼の効果は34等級(15:140:1)
・視野の中の天体は目の中心より鼻の方向に置くのが良い(盲点を裂けるため。しかし私は鼻の反対に置いた方が良く見えるので盲点のことを意識しながら見ています)
・そらし眼に対応する桿体細胞は物体の動きにも敏感なので、Scope Rocking(視野内ので天体を動かす)というテクも有効
 
③暗順応
・明るいものを見た時に分解されたロドプシンが再合成されるのに30分ほどかかる。これが暗順応に要する時間である
・ロドプシンは620nm(赤い光)より長い波長に対して感度がない。したがって赤いライトを用いるのは暗順応継続に有効である
・赤いLEDと白色ライトに赤いフィルタを被せたものとではLEDの方が暗順応継続に有利である。
・光が少なくなってくると錐体→桿体への切り替えが行われるが、最初に見えなくなるのは赤色であり、最後に消える色が青緑である
・惑星状星雲等が青緑色に見えたという報告を目にするが、上記の眼の感度による影響が大きい

写真はアラスカで観たオーロラです。
眼が暗順応すると色が白にしか見えなかったのですが、暗順応していない時は写真のような鮮やかなエメラルドグリーンに見えました。
白いオーロラって雲みたいでつまんないんですよね。
 
なお、10年以上前に私のHomepage(現在放置中)で天体観察テクニックというものを紹介しました
よかったら読んでください。