「星の写真、撮れるのですか?」
永田町の赤プリ跡地の美しいテラスで開催されている星空のつどいで、
ビール”Blue Moon”を飲みながらニコン1手持ちで夜空を撮っていた僕に声をかけてきたのは、クリッとした眼が印象的な美女だった。
年齢は、、、止めておこう。ここでは関係ない。
 
「もちろん写りますよ。ほらっ」
と言いながらテラスに植えられた木と一緒に写ったアークトゥルスを彼女に見せた。
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「ほんとだ。しっかり写っていますね。これってスピカですか?」
丁度ビクセンの人がマイクで星空解説を実施中であり、それを聞いた彼女が尋ねた。
「いや、アークトゥルスですよ」
 
彼女はバッグからスマホを取り出しうす雲がかかる大都会の明るい空にかざした。
星座を表示するアプリだ。けっこう使いこなしている感じがする。
「どこかな??」
「もう少し左、、。」
「あった、、。これですね。でも肉眼では見えないなあ」
 
「この方向に見えてるよ」
と空を指差すと、彼女が僕に顔を近づけ一緒に指の方向を見るので僕はドキドキした、、、というシナリオを想定していたけど、彼女は僕から適正な距離(概ね70cm)を取ったまま空を見上げた。
「白い大きな雲があるでしょ。その左」
「え?」
僕は手持ちで写真を撮り、木と雲と星の関係を説明した。
「私乱視なんで、、。でもうすーく見えたような気がする。」
「それはよかった」
「スピカも見えてますか?」
「雲があるけど何とか見えてますよ。あのプルデンシャルタワービルの上方」
僕はそらし眼テクでスピカを捕らえたけど、そんな説明はここでは似合わない。
「双眼鏡、持ってくればよかった~」
 
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「じゃあこれ使ったら?ビクセンの人が置いてくれている双眼鏡」
彼女は小さい方を手にしてすぐに星を探し始めた。
明らかに双眼鏡の使い方に慣れてる。
もしかして噂に聞く宙ガール?
僕は星に関するイベントにはほとんど出かけず宙ガールを見たことが無かったので密かに感動した。
 
「写真も撮ってみたいな」
彼女は自分のスマホで見事に淡い光を捕らえ、「でも星ってただの点だからつまんない」と言うので、
「アークトゥルスはオレンジ色で綺麗だけどね」
と返したが、彼女は無言だった。
 
 
少し離れたところから男の人の声がする。
国立天文台のN氏だ。
「皆さんが望遠鏡で見ているのはしし座です」
周りの望遠鏡よりも一回り大きなビクセンSD115アポクロマート鏡筒(後で調べたら28万円もすることがわかった)は西の空を指している。
そこにはかなり厚い雲があって肉眼では星が全く見えない。
おそらくレグルスを導入しているのだろうけど、N氏はレグルスといった一般の人に馴染みの無い固有名詞を使うより親しみやすいしし座を引用したようである。
「望遠鏡って凄い!!雲があるのに星が見えてる!!」といった驚きの声が上がることを期待したが、誰もしゃべらずに望遠鏡を覗いている。
みんな、大都会の真ん中での仕事や人間関係の疲れを癒すためにここにやってきたんだ。
望遠鏡が凄くてもしょぼくても関係ない!
きっとこの空間、ひとときが大切なのだ。
 
隣にいた彼女はいつの間にか芝生エリアに行って寝転がり、多くの人と同様、雲に覆われ星がほとんど見えない空を見つめていた。
 
「さて」
肉眼で見るアークトゥルスとスピカに満足した僕は賑わうテラスを後にし、地下鉄へ向かう人々の流れに飲み込まれた。
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上の文章は事実に基づくものです(脚色なし)
職場から地下鉄で2駅のところで開催されたFM放送プラネタリーカフェの公開収録を見に行き、続いて参加した星空のつどいでの出来事。
癒されました。
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