「ジャズ喫茶ベイシー」という映画で印象に残った言葉から天文という趣味について自分の意見をだらだらと呟いてみる企画の第2弾です。

前回の「かっこいい」という言葉に対する考察は天リフ山口さんの「天体写真の「スタイル」/平昌五輪スノーボード中井孝治さんの解説に学ぶ」にあったのですね。存じませんでした。

山口さんが書かれた以下の文章、刺さりました。(流石です)

自分がいいと思ったことを表現する。そのために高い技術を身につけ、一つの作品を完成度高く仕上げる。「スタイル」とはその結果滲み出るもの。

(前回の私のブログの稚拙さに赤面しました)

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気を取り直して今回の言葉はこれ

「ジャズというジャンルはない。そこにジャズな人がいるだけだ」

 

ジャズな人っていうのがジャズに情熱を注ぎ、嵌っている感があってしかもかっこいいですよね。

天文の世界では「ジャズな人」のような人のことを何と言えばよいのでしょう?

星好きな人?ちょっと違うなあ。

最近は星屋と名乗る人もいますが、アマチュアがxx屋と名乗るのはあんまりかなあ~??(私見です)

「~屋」はそれで飯を食っている人というイメージが強いです。「建築屋」とか「金融屋」とか「地上げ屋(笑)」とか、、。「私はその道のプロフェッショナルだ」という誇りみたいなものも伺えます(私見です)。

やっぱりジャズな人に対応する単語は「天キチ」ですよね(私見です)。今はこの言葉は使い難いので何かいい単語がありませんか?

 

それから映画で印象に残った別の言葉が

「音楽もオーディオも人間の情熱の表れであり、人間無くして伝わることは無い」です。

 

演奏するのも聴くのも人ですからね。音楽やオーディオに取り組んだ人の情熱が素晴らしい演奏・音を産み、それらが人間を感動させて広く伝わっていくということなんでしょうね。


ニューヨークにはやる気があるアマチュアが飛び入りで参加できるジャズクラブが結構あります。

誰でも最低1コーラスは演奏(歌)をやらせてもらえますが、出来が悪いと他の人が演奏を被せてきてそれでおしまいです。

被せてくる人は観客も含めて周りの反応を見て下手な人の演奏中断を決断しています。いじわるというより教育です。
下の写真はあんまり歌が上手でなかった女性に対して右側の客席に座っていたトロンボーン奏者が思いっきり被せたシーンです。女性は残念そうでしたが、後でいろんな人たちからコメントをもらっていました。
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逆にいい演奏だと周りが盛り上げて何コーラスもさせてもらえるだけでなく、運が良ければ翌日には有名なプロと一緒に演奏できたりもします。

素晴しいジャズが人達によって作られ、そしてそこに居合わせた観客やミュージシャンたちによって育てられ広められていくという例ですね。音楽の神髄のひとつである”Call and Response”の王道です。
どんなに素晴らしいプロでも最初はアマチュア、、。いろんな人と関わり刺激を受け、そして一流のミュージシャンになっていくのでしょう。

 

また、この「人」っていうのは他人だけじゃなく、自分自身を指すこともあると思います。

有名なソロアルバムにThelonious Himself(Thelonious Monk)Alone(Bill Evans)Conversations with myself (Bill Evans)といったものがあります。

まさに自己との対話ですね。

alone
 

天文も人とのかかわりは重要です。

もちろん、自宅でコツコツと惑星の観察(自己との対話)をされている人もいらっしゃいますが、、。


米国では各地域に天文同好会(Astronomical Society)があり、それを束ねるAstronomical Leagueというのがあります。

地元の同好会に所属すればAstronomical Leagueの様々なイベントに参加でき、会誌「Reflector」も送られてきます。

reflector

それからSky & Telescope誌の定期購読にも割引があって団体行動するメリットを存分に受けることができます。

各同好会は組織的なアウトリーチも盛んで、アウトリーチの動画マニュアルや”べからず”集とかも配布されています。

また、Novice(初級)Intermediate(中級)、Advanced(上級)レベル別にアマチュアが楽しめるようなイベントやプログラムがStar PartyAstronomical Leagueで多数用意され、その多くが”Call and Response”(主催者が課題を示すと参加者が取り組み結果を報告。それについて意見交換した後、ご褒美のPin Badgeを進呈するというもの)形式となっており、課題後の意見交換が主催者・参加者双方のスキルアップにもつながっています。(to be a better observer)

以下がAstronomical LeagueObserving Program一覧です。

興味深いものが多数ありますよね。

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こういった組織的な活動が宇宙大国というものを支えているのでしょう。NASAや大学教授もいろんなプログラムに顔を出しますし。

米国は多民族国家ですので、勝手にやらすと収拾がつかなくなるというのも裏にはあるのでしょうけど、、。

 

日本にもCall and Response形式で高めて行こうという動きはありますよね。民間の資格ですが案内人とかソムリエなんていうのもその一つなのでしょう。

ただ、この案内人の仕事は(星空案内人のホームページに資格取得後の活動例が記載されているように)大部分が一般大衆又は初心者向けです。

・自分の子供や身近な人に星の話をしたり、野外で星を見せたりする。

・科学館や天文台、星空関連の同好会の中で星空観望会など、ボランティア活動をする。

・スキルを磨いて、講演活動、科学館やプラネタリウムなどの仕事に従事する

・観光地などで星空案内のガイドツアーを行う

・星や宇宙に関する執筆稼働をするなど。

 

一方ソムリエの本家である一般社団法人日本ソムリエ協会のホームページによると、役割が曖昧だったソムリエという言葉の定義を2016年に見直しました。今はソムリエ、シニアソムリエ、ワインエキスパート、シニアワインエキスパートという呼称を使っており、どちらかというと初心者というよりワインや食事を本格的に楽しむ人のことを意識しています。(以前はエキスパートの代わりにアドバイザーという名前を使っており、やや上から目線でした。)

星に関する案内人も分野毎にエキスパートとかシニアエキスパートという高いレベルを設け、初心者以外の人にも上記リストのような天体観察の楽しみ方を提供するようなことはできないでしょうか?

常に高い次元を目指すジャズ界の大御所が出てくる映画を見て、そんなことを思いました。