「木星もようやく仲直りするのね。397年も土星に近づかないなんてどれだけ不仲なのよ」

葛西臨海公園で行われた天体観察会で、私の前にいた写真の女性が彼に話していた。
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それを聞いた後ろの女性と小学生の娘の会話
「江戸時代からこれまでずっと離れていたんだってよ」
「何だかさみしいねえ」

どうやら今回の木星と土星の会合は見かけだけじゃなく物理的に近づくと信じているみたい。
ぼくは何か言おうと思ったが控えた。
ここは公園内。みんな彼氏や家族との団らんの為に来ているんだ。邪魔しちゃだめだ。

「ワクワクするねえ」前の女性が天体鑑賞スクールのBちゃんのように目をキラキラさせながらつぶやいていたら、なんと、、。
前方に1台だけあったビクセンの80mm屈折の向きが変わった。
「これからは火星を見てもらいます」
独りでオペレーターを担当されているビクセンの方が静かにアナウンスした。
「ごめんなさい、木星は雲に隠されてしまったので」

「え~っ??仲良しの木星と土星見たかった~」

見せて頂いた火星はかなりの低倍率だったようで円盤状であるか否かもわからなかったが、とても明るくキラキラしていた。
でも覗いた人達の反応の殆どは
「確かにあったね」
だけだった、、。

一通り覗くと部屋の中に招かれて、まず星座早見を貸し出し使い方の説明があり、それから夏の大三角やM45などの話があった。
星座早見で天体の位置を見ながら話を聞くのは印象に残るからいいアイデアだ。

「M45は牡牛の肩ロースの位置にあるのです」
というビクセンの方の説明も星座早見を見ると理解できる、、。(ウケなかったけど)

30分ほどの座学+タイムラプス動画鑑賞のあと、多くの家族は、300円払って星座用2倍双眼鏡を貸りて楽しそうに空を見上げていた。

主催者側からの説明は最低限にとどめ、家族の会話を邪魔しない静かな天体観察会。
独りで参加したけど、楽しそうな家族を見てぼくも温かい気持ちになった。