今回は窓ガラス越しの観察について考察してみます。

天体の見え味に影響する窓ガラスの主な特性には以下のものがありますよね。
・板厚の変化
・表面のうねり(比較的広範囲の理想平面からのずれ)
・粗さ(切削等による狭い範囲における荒れのようなもの)
・内部の気泡や不純物(最近顕著なものは殆ど存在しないと思います)

これらがJIS規格や製造会社のスペックで管理(保証)されているのかと思い調査しましたが、一般的な窓ガラスには板厚公差以外の細かい規定は見つかりませんでした。

まあ、ガラス単体でどれだけ厳しく管理しても、住宅に取付けると自重やガラス周囲の固定条件によってたわみ等が発生しますので規定は難しそうです。肉眼で確認できる窓の外の景色に違和感が無ければOKということかな。
また、平板上のうねりやたわみは強度に著しい影響を及ぼすので、近頃、耐震等で厳しくなっている強度を保証すればある程度の平面性も担保できそうですね。

とあるガラスメーカーの3次元測定結果によると、実際の平面度は一片の長さが300mmで平面度70μm、500mmで200μm、1000mmで1000μmだそうです。(これらは保証値ではないらしい)

70μmは一般的な高精度反射鏡の面精度1/4λ≒160nmの約400倍ですね。発表されている平面度がPV値か否かわからないので、直接比較するのは良くないかもしれませんが、オーダーが2桁異なることは、我々の間隔とも合うんじゃないでしょうか?

ただ70μmは一片が300mmの時なので、5cm反射や双眼鏡の対象となる一片50mmでは3つの測定結果から多項式近似すると4μm程度。1/4λの25倍になります。
これは平均値ですから局所的には1/4λに限りなく近く観察に充分に耐えうるところと、全く駄目なところがあるのでしょうね。

それでは実際に天体を観察した結果を紹介しましょう。
まずは駄目な例、、NGC6366です。
n6366fail
写真をクリックして拡大してご覧ください。
全体的に横方向に星像が伸びており、特に中央から左の方は星が2重になってとても見苦しいですね。

私のこれまでの電視観望結果では極軸が5度くらいずれていても問題なく、しかも望遠鏡がコンパクトなので簡単にPCの左側や右側に移動させられます。
Move

ですから最初の写真を撮った位置から星像が綺麗になるところを探しながら望遠鏡を移動させ、撮影した結果がこれ↓
n6366

かなり良像になりましたよね。

窓ガラスはほぼ東の方向に向いており、撮影時のNGC6366からの光は30度ほど斜めから部屋の中に入って来ました。
これだけ斜めでも大きな問題なく、むしろ局部的なガラスの平面性が影響しているようです。

以前紹介したように大阪の高層ホテルの窓越しに離角が3秒を切るいっかくじゅう座のβ星を観察することができました。
その窓は開けることができず、壁と同様強度を保つ重要な役割を果たしていますので、前述のように平面性が高いのだと思います。しかもホテルの高層階は綺麗な景色がウリですからね、、。  

今は花粉がとてつもなく多い時期ですので、窓を閉めたまま小さな望遠鏡の位置を変えながら天体を観察するのは如何でしょうか?